●ふきのとう舎でBDFをつくる 1993年から廃食油からBDF(バイオディーゼル燃料)をつくっている東京・墨田区にある染谷商店。前回2002年のヘンプカーではここでヘンプオイルをBDFに変換してもらいました。
今回は、染谷商店から紹介してもらった神奈川県大和市にある社会福祉法人ふきのとう舎でヘンプオイルをBDFにしてもらっています。ふきのとう舎は、障がいをもった方々の自立支援事業をしている施設です。その事業の一つとして2006年から油回収とBDF製造と販売を実施しています。
飲食店からのてんぷら油をBDFにしたものは、大和市、海老名市などのゴミ収集車、市営バス、運送会社などの軽油代替燃料として販売して利用されています。3・11の震災以降の燃料不足からBDFに目覚めた人も多数いて、新しいお客さんが増えたとのことでした。今は軽油が135円/Lに対してBDFは110円/Lで販売しています。
ふきのとう舎は、染谷商店と全く同じ製造設備をもっているため、ヘンプオイルで実施することに対しては、何の抵抗感もなく受け入れていただきました。普通の会社なら、大麻の油は扱いたくないという偏見が必ず入ります(お約束パターン)
今回はヘンプオイルは、次のようにすることにしました
ポリタンク20L:600L → BDF(バイオディーゼル燃料)
250mlボトル品:975L → SVO(ストレートベジタブルオイル)
合計 1575L
ポリタンクのものは、酸価(AV)という遊離脂肪酸の数値が油1g中15r以上あり、かなり品質が劣化していることが明らかになりました。(正確な劣化を知るには過酸化物価(PV)の値を見ないとダメですが)
普段の食用ヘンプオイルは1〜4ぐらいです。遊離脂肪酸=グリセリン=油の粘度が高くなる原因なので、SVOに使うにしても止めた方がいいなと判断したためBDFにすることにしました。ヘンプオイルBDF製造費は1L:100円。2002年時は50円だったのに・・・・・!!!
●BDFのつくり方 
反応釜にヘンプオイル、メタノール(メチルアルコール)を一定の割合(約15%)で入れ、これに微量の触煤(水酸化ナトリウム)を加えて加熱します。
すると、メチルエステルとグリセリンが生成され、メチルエステルの方が「バイオディ−ゼル燃料」になります。グリセリンはグリセリン受け層に沈殿します。この後、冷却、ろ過、貯蔵という約6時間の行程後「バイオディーゼル燃料」ができあがります。
ふきのとう舎では、1回に100L処理できる水洗い方式のBDF製造装置と、1回に200L処理できる蒸留方式のBDFの2台がありました。水洗い方式は、文字通り水で洗う工程があるため、どうしても廃水がでてきます。一方で蒸留式は廃水が出ずに、使ったメタノールも再利用でき、品質のよいBDFが作れるという特徴をもちます。その替わり原料からBDFになる収率が水洗いより低いのが難点なのです。装置の価格もはやり高いです。水洗い350万、蒸留1000万円だそうです。
水洗い方式 原料100LとするとBDFが90Lできる。収率90%
蒸留方式 原料200LとするとBDFが150Lできる。収率75%
これに酸化防止剤を加えてBDFができあがり。
今回は、環境影響と品質のことを考えて重視するために蒸留方式で実施しました。ちなみに、前回2002ン年のヘンプカーでは水洗い方式で実施しております。
●廃グリセリンはどうするの? 
A(ヘンプオイル)+B(メタノール) → C(メチルエステル)+D(グリセリン)
BDFの作り方は、上記のエステル交換という反応なので、
グリセリンの利用がやや問題になります。ヘンプオイル由来のグリセリンがたぶん150Lぐらい発生します。貴重なので欲しいという方はたくさんいるかもしれません。
大きなBDF製造工場では、石けんにできるほどきれいで純度の高いグリセリンを取り出せる設備が導入されているところもありますが、ふきのとう舎ではそのまま産業廃棄物になってしまうのが現状です。
廃グリセリンの利用に挑戦したい方を募集していますが、私が見たところ
堆肥に5〜10%混ぜて肥料に使うしか使い道がない感じがします。
これは現地で再度確認してきます。写真は廃食油の廃グリセリンなので。
写真1:ふきのとう舎
写真2:水洗い方式のBDF(茶色)、蒸留方式のBDF(透明)
写真3:廃グリセリン
(赤星)
posted by yashiro at 17:27|
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